MVP 天龍源一郎
- 年間最高試合賞
天龍源一郎 vs スタン・ハンセン
7月27日/長野市民体育館/PWF、UNヘビー級ダブル選手権試合
- 殊勲賞
- 藤波辰巳
- 敢闘賞
- 長州力
- 技能賞
- ジャンボ鶴田
- 新人賞
- 馳浩
- 功労賞
- 栗栖正伸/小杉俊二
- 大衆賞
- ジャイアント馬場/ラッシャー木村
- 特別功労賞
- ブルーザー・ブロディ
- 特別大賞
- 前田日明
寸 評
プロレス大賞選考委員は19日、東京スポーツ新聞社会議室で行われ、MVP、ベストバウトは天龍、前田のデスマッチになった。
「2年目に突入した天龍革命だが勢いは一向に衰えない。怖くなるほど凄まじかった。今の日本マット界で、天龍ほど熱い男はいない」〝熱き心〟支持者は、試合直後のリングサイドにいるかのように興奮してまくしたてる。
〝新格闘王〟前田を推す声も大きかった。「プロレスファンだけではなく、広く一般の人々の関心を呼んだ」と強調。UWF現象とまで騒がれた超人気をタテに一歩も引こうとしない。
88年のプロレス界をリードした2人の〝番外戦〟に決着をつけるのは難しい。議論百出とはこのことだ。15年の歴史を誇るプロレス大賞でも、こんなにもめたことはかつてなかった。
話し合いでは結論が出そうにない。決戦投票の結果、天龍が前田をわずかに抑え、3年連続MVPに輝いた。ベストバウトに選ばれたハンセンとの死闘だけでなく、ブロディや鶴田との一連の激闘が決め手となった。
88年の約170試合のすべてを全力で走り抜けた天龍と、5試合しか活躍の場がなかった前田の差が、苦しい二者択一の最後の決断をもたらした。
しかし、投票での決定はあまりにも酷だった。「2人が戦って決めればいいんだよ」選考委員の誰もが思った。強いほうが受賞すればいい。これほど簡単なことはない。
選考経過を知らされた天龍も同じ思いを抱いたという。「前田とはいつか戦わなくてはいけない。いや、来年やろうじゃないか。勝った方が89年のMVPだ」天龍革命を全日マットのワクにとどめてはいない。
対天龍戦を要望している前田だ。異存があるはずがない。「天龍さんとは魂をぶつけ合える」と天龍へのラブコールは高まるばかりだ。
2人ともプロレス人気の落ち込みを声高に唱える世間に反発してきた。魂のプロレスをぶつければ、必ず道は開けてくるはずだ。リング上で連日熱い情熱を実践している天龍が3年連続MVPに輝き、既存のリングにあきたらず自ら新団体を興した前田が〝準MVP〟の意味合いを持つ特別大賞に選ばれたのだ。来るべく89年には、この2人がリング上でMVP争いを展開しなくてはいけない。戦って決着をつける。世の格闘技ファンは単純な答えを待ち望んでいる。
天龍と前田。いずれが強いのか。どちらのファイトが激しいのか。今年は机上の永遠のテーマに終わってしまったが、89年は、すっきりと黒白をつけてほしい。
[選考委員長]桜井康雄(編集局長)[選考委員]加藤知則(第2運動部副部長)/川野辺修(第2運動部主任)/柴田惣一(第2運動部)/吉武保則(第2運動部)/山下賢次(第2運動部)/鈴木晧三(写真部部長)/雪田優一(写真部次長)/木明勝義(写真部)(順不同)