MVP 前田日明
- 年間最高試合賞
天龍源一郎 vs ジャンボ鶴田
6月5日/日本武道館/インタ・PWF・UN統一ヘビー級選手権試合
- 最優秀タッグ賞
- ジャンボ鶴田&谷津嘉章
- 殊勲賞
- 橋本真也
- 敢闘賞
- 長州力
- 技能賞
- 藤原喜明
- 新人賞
- 小橋健太
- 功労賞
- 石川敬士
- 特別賞
- 大仁田厚/武藤敬司
- 特別功労賞
- アントニオ猪木
寸 評
果てしなかった。12日、東京スポーツ新聞社会議室で行われたプロレス大賞選考委員会。前田VS天龍で争われたMVP、ベストバウトの議論に終着点は見当たらない。「タイトルマッチと同じ試合内容を天龍は1年間実行した。過去には誰にもできなかったことを天龍は毎日やってきたんだ」熱き心・天龍を強力に推進する声が高くなる。
「前田は既成のプロレスの枠を大きく超えた。社会現象とまで評価されたUWFブームはそのまま前田ブームだった。新しい時代の主人公は前田しかいない」格闘王・前田の支持者も一歩も引かない。
選考は困難を極めた。前田と天龍。プロレス界の2大ヒーローの前にMVP、ベストバウトの投票結果は真二つに分かれる。ともに決勝投票にもつれ込んだ。
最後の最後でMVPは前田に、ベストバウトは天龍が鶴田から統一3冠王座を奪い取った6・5武道館決戦の激闘に決定した。
「前田なしではいまの、そしてこれからのプロレス界は存在しない」という理由が決め手になって、前田は天龍の4年連続MVP受賞を阻止。だが、天龍も「6・5武道館決戦はプロレス史上に残る大勝負。誰も超えることはできない」とUWF11・29東京ドーム決戦の前田VSオランダの柔道王ウィリー・ウィルヘルムの異種格闘技戦を抑え切ってみせた。MVPの前田とベストバウトの天龍。80年代最後を彩るプロレス大賞にこれほどふさわしい男たちはいない。
昨年5月12日、前田はようやく新生UWFを旗揚げ。孤立無援の状況で理想を追い求め続けた。
最初はほんの小さな息吹にすぎなかったが、5月4日には大阪球場に乗り込み、11月29日には、〝夢の聖地〟東京ドームへ進出、6万人大観衆を集めた。新しい息吹は巨大な津波となってプロレス界だけではなく、スポーツ界を覆い尽くした。
UWF大会はプロレスイベントでなく社会現象とまでなった。これをケン引した格闘王・前田は確実に時代を動かす主役だ。
ただ前田には究極の名勝負といわれ、万人に感動を与える激闘をおしくも体験することはできていない。それが80年代に残された唯一の課題だ。
[選考委員長]桜井康雄(東京スポーツ新聞社編集局長)[選考委員]鈴木晧三(東京スポーツ新聞社写真部部長)/加藤知則(東京スポーツ新聞社第二運動部副部長)/川野辺修(東京スポーツ新聞社第二運動部次長)/柴田惣一(東京スポーツ新聞社第二運動部主任)/吉武保則(東京スポーツ新聞社第二運動部)/山下賢次(東京スポーツ新聞社第二運動部)/吉良輝夫(東京スポーツ新聞社写真部)(順不同)