MVP 鷹木信悟
- 年間最高試合賞
武藤敬司 vs 潮崎豪
2月12日/日本武道館/GHCヘビー級選手権
- 最優秀タッグ賞
- タイチ&ザック・セイバーJr.
- 殊勲賞
- ジェイク・リー
- 敢闘賞
- 竹下幸之介
- 技能賞
- グレートーOーカーン
- 新人賞
- 荒井優希
- 女子プロ大賞
- 林下詩美
- 功労賞
- 風間ルミ
寸 評
MVPにノミネートされたのは鷹木と武藤。くしくも山梨の同郷2選手の名前が挙がったが、コロナ禍による混乱、主力選手の相次ぐ離脱などアクシデント続きだった今年の新日本において、6月のIWGP世界王座奪取から団体を支えてきた鷹木の評価は絶大だった。1次投票で過半数の14票を獲得した。
最高の栄誉を初受賞した鷹木は「ひと言で言えば感無量だなと。ただこうやって選んでもらったけど、特別なにかを努力したってことはないんだよね。いつも『我道驀進』って言ってるけど、自分の信念を貫いた結果だと思ってるよ」と胸を張る。
印象に残っている試合には、決戦3週間前にコロナに感染しながら不屈の闘志で復活した、9月5日メットライフドーム大会でのEVILとのV2戦を挙げた。
鷹木にとってのMVP受賞は、人生を懸けた大ばくちに勝った証しだ。トップレスラーとしての地位を確立していたドラゴンゲートを2018年10月に退団。盟友の内藤哲也に誘われ、新日本に主戦場を移した。
「言ってみたら安定したポジションはあったけど、業界全体に影響を与えることは何もできていなかった。このままキャリアを終えたら死んでも死に切れないと。プロである以上、記憶にも記録にも残るレスラーになりたかった。両国での初戦でオカダ(カズチカ)と内藤がやってるのを間近で見て『今に見てろよ、俺もすぐそこにいくからな』って思ってた」
たゆまぬ努力により、その思いは結実した。ここ10年のプロレス大賞MVPは内藤、オカダ、棚橋弘至の3選手が分け合う時代が続いていたが、鷹木が風穴をあけた。「プロレスの象徴にならなきゃいけない存在がMVPだと思うから、身が引き締まる思いだよ」
来年1月4日東京ドーム大会ではオカダとのV4戦を控えており、勝てば翌5日大会でウィル・オスプレイの挑戦を受ける。「本当の意味で真価が問われるのは22年。いきなり正念場があるから、ここは何としても乗り切りたい。新日本だけではなくプロレス界のためにも俺が乗り切らないとダメだと思うんだよね」と闘志を燃やした。
もちろん現状に満足することなく常に高みを目指す。「同郷の偉人でもあるジャンボ鶴田、武藤敬司に並べるようになりたいと思ってやってきたけど、その2人に比べたらまだまだ未熟者。キャリアも年齢も20年上の武藤選手が今年MVPにノミネートされてるわけだからね。来年40代に突入するけど、俺もより幅広いプロレスをできるようになりたい」と同賞4度受賞の武藤、3度受賞の鶴田さんを引き合いに出して精進を誓った。
尊敬する天龍が史上最多9度の受賞歴を持つベストバウト獲得も目標の一つだ。「天龍さんにも言われたけど、やっぱり痛みと迫力が伝わるプロレスをやっていきたい。世間から『プロレスといえば鷹木の試合だよね』って思われるような試合をこれからも提供していきたいよね」と目を輝かせた。
どんな状況にも屈せず信じた道を突き進み、逆風を追い風に変えた。比類なきバイタリティーで激動の1年をけん引した昇り龍が、名だたる名レスラーたちの仲間入りを果たすとともにプロレス史にその名を刻んだ。
[選考委員長]初山潤一(東京スポーツ新聞社運動二部部長)[特別選考委員]蝶野正洋/小橋建太[選考委員]平鍋幸治(東京スポーツ新聞社取締役編集局長)/下田知仁(東京スポーツ新聞社写真映像部副部長)/中村亜希子(東京スポーツ新聞社運動二部次長)/小坂健一郎(東京スポーツ新聞社運動二部次長)/前田聡(東京スポーツ新聞社運動二部主任)/岡本佑介(東京スポーツ新聞社運動二部主任)/桂川智広(東京スポーツ新聞社運動二部部員)/岩田大補(東京スポーツ新聞社写真映像部部員)/洪経人(デイリースポーツ)/大西洋和(東京中日スポーツ)/松熊洋介(日刊スポーツ)/湯沢直哉(週刊プロレス編集長)/小佐野景浩(プロレスライター)/元井美貴(プロレスキャスター)/今野利明(サムライTVプロデューサー)/門馬忠雄(プロレス評論家)〈順不同〉